農業・食・レシピ

私の食育日記 <JA広報通信より>

味蕾

私の食育日記タレント・食生活アドバイザー●岡村麻純
子育てをするに当たって心掛けていることの一つに、わが子の持っている力を邪魔しないということがあります。子どもの成長力、そして発想力には大人はかないません。積み木をするとき、何を作ろうか? と聞いてしまいがちですが、そこをぐっとこらえて見ていると、次々と面白い形に並べていきます。そのとき、何かを作ることが全てではないことに気付かされます。子どもが持っている多くの才能を、長く生きてきた大人の感覚で邪魔したくないというのが願いです。食に関しても同じことがいえます。人は、口の中(舌)にある味蕾(みらい)という部分を使って味を認識します。乳幼児では1万個ほどある味蕾も年齢とともに減少し、高齢者は乳幼児の30%から50%も減少してしまうといわれています。年を取ると味の濃い物を好みがちになるのも、この味蕾の減少が影響していると考えられます。味蕾はたばこや嗜好(しこう)品によっても減少しやすく、また濃い味の物を食べ続けることでも、味覚が鈍感になるといわれています。なので、息子の食事は、食材そのままやだし汁で煮た物を中心に、味付けはほんのわずかにしています。そんな食事を見て「こんな味の薄い物ばかり、かわいそうに」とか、甘いおやつを持ってきて、「こんなおいしい物を食べさせてあげないなんて」と言われることがあります。そのたびに「いや、子どもは素材その物のおいしさを私たち以上に感じることができるのです。甘過ぎる物をあげないことは、子どもの持っている力を邪魔しないためなんです」と訴えています。ちなみに味蕾は新陳代謝が活発な細胞で、日々新しく生まれ変わっていきます。そのときに必要なのが亜鉛を含む酵素のため、亜鉛が不足すると味が感じにくくなるといわれています。亜鉛はカキや煮干しなどの魚介類、牛肉や卵黄などに多く含まれています。私たちも子どもたちに負けないように味蕾を大切にしていきたいと思います。
岡村 麻純(おかむら ますみ) 1984年7月31日生まれ。お茶の水女子大学卒。大学で4年間食物科学を学び、食生活アドバイザーなどの資格を持つ。
公式ブログ:http://ameblo.jp/masumiokamura/

食育日記